「とにかく……」
「……………………」
「颯弥、洸太、自粛しろ……」
「……………………」
「バンドの存続を考えるんだったら、これ以上事を荒立てるな……」
「……………………」


拓真が忠告する。
二人に言い聞かせる。

拓真のそれに、二人は口を瞑った。
拓真に反論する事はなかった。

拓真が颯弥に声音を向ける。


「颯弥……」
「……………………」
「忘れていないよな、彼女の事……」
「……………………」


拓真のその言葉に、颯弥が顔を上げる。
拓真の顔を見据えた。

拓真に言い放った。




「あれは俺のせいじゃねぇよ……」











俺ノセイジャナイ……?



ジャア、誰ノセイ……?
誰ノセイナノヨ……?

教エテヨ……?
ネェ、教エテヨ……?





ネェ、誰ノセイ……?




















声がする……


大事な人の声がする……
鼓膜が震える……


その声音を呼び覚ます…… …



声が聞こえる…… …













『美優ーーッ!』
『……………!?』


『見て見て~今日のライブの参戦服可愛いでしょ♪』
『可愛いけど、ライブハウスじゃ揉みくちゃにされちゃって分かんないよーー』
『それでもいいの~、もしかしたら見てくれるかもしれないじゃない♪』
『……………………』


『見えなくても可愛くいたいのー♪』
『……………………』









止まない……
その声音は止まない……

ずっと鳴っている……
ずっと響いている……


鼓膜が震えている…… …





声音が聞こえる……

声音が聴こえる…… … …






『                             』




















静寂な音箱。
真っ暗闇、漆黒の地獄箱。



ステージの地が微かに揺れる。
照明器具がカタカタと小さな音を上げる。

ドラムのシンバルが小さく震える。
ギターとベースの弦が、小さな火花を上げる。
不気味なマイクのハウリング。


ジリジリと小さな音が上がる。
バチバチと小さな火花が上がる。

小さくて不気味な空中放電。





小さな音が聴こえる。


小さな声が聞こえる。









『                              』





















.